文化施設・パビリオン オフィス

ドライブ・キャノピー

2021年5月プロポーザル提案
用途: 交番
敷地面積: 184 m2
延床面積: 90m2
住所: 福山市, 広島県

このパビリオンは、鉄鋼業が盛んな日本の中国地方の都市、福山市で計画された交番(ポリスボックス)のコンペティションでの提案である。

毎日4万人が利用する福山駅の西、新幹線のリニアな高架の前に敷地がある。車道に挟まれた三角形の土地に、市民生活を見守り、支える通常の交番プログラム(機能)に加え、街の発展をサポートする、親しみやすさとシンボル性を持ったデザインが求められた。機能は一階に警察官のオフィスと利用者の窓口、二階に仮眠室がある。

提案にあたり、屋根に着目した。400年近く前から親しまれてきた福山発祥の「辻堂」という道端に設けられたフォリーが住民に休憩所や集いの場としての屋根下空間を提供してきたからである。さらに駅から臨む遠くからの視認性を高め、三方を車道に囲まれた敷地が持つスピード感を表現するために駅の方へ向かってせり上がる屋根(=大庇)をデザインした。夜間、大庇はインタラクティブな照明アートによって照らされ浮かびあがる。人々がながめ、集い、寄り添う都市の中の現代の辻堂、安心のランドマークとなる。

この湾曲する大庇は、駅の北側にある福山城の屋根の「そり」のかたちに呼応する。敷地のある駅南地区は、新しい建物が多く四角く垂直なラインの建物が並ぶ。かつてはこの敷地が城下町の一部であったことから、線路によって分断された風景と歴史をこの大庇の曲線によってつなぐ。また、庇の構造は鉄鋼業が盛んな福山で製鉄されたスチールプレートのサンドイッチパネルとし、地元の鉄工所で製作、組立し現場での施工期間を短縮することを提案した。

この建築が交番というプログラムの枠を超えて、街の歴史と風景をつなぐ新しいシンボルとなり、この街の発展を導きサポートすることを願って「DRIVE CANOPY」と名付けた。

[デザイン・クレジット]
建築設計: 丹羽隆志アーキテクツ・ジャパン
デザインチーム: 丹羽隆志, 高橋京平, Tran Thi Thu Trang, Pham Duy Lam
構造設計: 杉本将基構造設計事務所